(画像出典元:Wikipedia)

数か月前から香港ではデモが起こっていますね。
最初はきちんとした秩序だったデモでしたが過激化し、そこから気付けば警察がデモ参加者や一般市民を暴行したり、発砲したりしてけが人も出ています。

情報が一般的に広まった際には過激化しすぎていて、香港の情報を追っていないとなにが起こっているか非常に分かりにくいですよね。
そもそもなぜ香港でデモが起きているのか、その理由や原因をわかりやすく解説したいと思います。

そのためにはまず香港の成り立ちから知る必要があります。

スポンサーリンク

香港の成り立ち

まだ今の中国が清だったころ、アヘン戦争により香港はイギリスの植民地になりました。
イギリスの支配下だったので、イギリス人が優遇され、それに伴い都市も発展しますが、貿易港として活気に満ちあふれていたので中国人も職を求めて多数移り住んでいます。

ただ1941~1945年の間は日本の統治下となり、経済が停滞、人口も流出しますが、日本敗戦後に香港は再度イギリスの植民地に復帰します。

中国共産党による中華人民共和国が樹立した際には、共産主義に反発する多くの中国人が香港に移住しています。

その後も香港は金融、商業、観光都市として発展していきますが、租借地だったため1997年中華人民共和国に返還されました。
ちなみにイギリスは租借を延長したかったのですが拒否されています。

香港は無事に中国に返還されたものの、当時香港に住んでいる多くの人が喜んだかというとそうでもありません。
天安門事件を知る香港の住人は一党独裁の中国政府に対して不安の方が大きかったんですね。

そしてなにより当時の香港は世界で最も成功した植民地とまで言われていて、民主主義国家としての側面があったからです。

これを嫌がった香港の住民の一部は、中国に返還される前にイギリス連邦の構成国へ移住しています。

香港は中国に返還される際に特別行政区に位置付けられ、50年間は社会主義の制度と政策を実施しないとの約束(中英共同宣言)がされています。
これが「一国両制(一国二制度)」です。

返還されたのが1997年で、50年間は香港の「高度の自治権」が守られるから2047年まではなにも問題ないのでは?と思いますよね。
しかしそうはなりませんでした。

中国が香港に干渉

中国は香港も社会主義として取り込みたいので、今までも行政を中国政府の影響下にするために画策してきました。
また香港では言論および報道の自由や通信の秘密が保障されている一方で、有力メディアが中国寄りの企業に買収されており、自由な報道ができない部分もあるようです。

2011年にも義務教育課程で中国政府に対する愛国心を育成するカリキュラムに対して学生らが「洗脳教育だ」として反発しています。
このカリキュラムは撤回されましたが、2014年にも香港市民による大規模デモの雨傘革命が発生します。

雨傘革命(雨傘運動)

香港の行政長官選挙はもともと香港市民に選挙権がありませんでした。
しかし2017年の香港特別行政区行政長官選挙では1人1票の選挙権を導入する予定でしたが、立候補者は親中派の2、3人のみに限定する新制度案を提示。

つまり中国共産党が認めない民主派の出馬は実質できないということになり、これに対して学生らが中心になって抗議活動を行い、デモが起こります。
そして一般市民も巻き込んだ大規模デモに発展しました。

この雨傘革命(雨傘運動)でも武器を持たない一般市民への催涙スプレーや胡椒スプレー、催涙剤入りの放水スプレーによる鎮圧だけでなく、警察による暴行などが起きています。
雨傘革命(雨傘運動)も現在起きているデモも非常に似ている部分がありますね。

結局、新制度案は否決されましたが、選挙権はないままの状態です。

では話を現在に戻しましょう。

今の香港のデモはの理由・原因は?

今香港で起きているデモは選挙権ではなく、別の内容で起きています。
それが「逃亡犯条例の改正案」に対しての抗議活動です。

逃亡犯条例とは?

現在、香港では刑事事件の容疑者の身柄引き渡しができるのは条約を結んでいる米国や英国などの20か国のみです。
日本とは協力協定を結んでおり、香港は基本的に同じ民主主義の司法制度がある国にのみ身柄の引き渡しを行っています。

この逃亡犯条例が制定された際には「司法制度、刑罰の制度、人権が十分守られる政府とのみ犯罪人引渡しのできる関係」を前提としており、イギリスが中国を信用しておらず、引き渡しの悪用を防ぐ目的があったわけです。

ただこの逃亡犯条例により2018年に問題が起きてしまったわけです。

台湾での殺人事件

香港人学生カップルが台湾を旅行中にトラブルになり、男性(陳同佳)が女性(潘曉穎)を殺害し台北で遺棄してしまいます。
(トラブルの原因は女性(潘曉穎)が他の男性と性的関係を持ち妊娠したことによる)
その後、男性(陳同佳)は香港に戻ります。

女性(潘曉穎)の親族が連絡が取れないのを不審に思い、香港の警察に通報。
捜査の結果、男性(陳同佳)が彼女のキャッシュっカードでお金を引き出していたことがわかり窃盗容疑で逮捕されます。
さらに取り調べにより殺害および遺棄も自白しました。

しかし殺人事件は香港ではなく台湾で起きていたので、香港の刑法では殺人罪で起訴できず、窃盗罪とマネーロンダリングでのみの起訴となりました。

これをきっかけに香港政府は逃亡犯条例の改正案に乗り出します。

逃亡犯条例の改正案の問題点

現在の逃亡犯条例で身柄の引き渡しができない問題があったのは事実ですが、逃亡犯条例が改正されてしまうと、中国大陸(マカオや台湾含む)への容疑者の引き渡しが可能になります。
これのなにが問題かというと、本来独立している司法制度の香港に中国政府が司法制度を管理している影響が強まるということです。

そうなれば中国から香港に逃げた民主活動家や人権活動家などの身柄も引き渡されてしまう可能性が出てきます。
香港でのデモなどに対しても反政府活動として中国政府が取り締まることもできます。

中国政府は民主化運動を徹底的に弾圧します。
厳しい言論統制を敷き、批判的な言動は徹底的に取り締まる中国政府の影響が、香港にまで及ぶと困ります。
香港住民ではなく旅行や留学、空港で乗り継ぎも対象になるので、我々にも関係のある事柄です。

すでに香港内での中国政府による香港人らの拉致、連行は秘密裏に起きていると言われています。
香港人は情報が規制されていないので、中国政府が政治犯や思想犯と認定した人物にどういったことをするかも知っています。

この改正案の中で「政治犯や死刑は除く」、「入出国審査官に対する詐欺など7年以上の懲役刑が科される可能性のある犯罪のみ」などの取り決めはあるものの、悪用される可能性は十分に考えられます。

改正案については香港だけの問題でもなく、アメリカやイギリス、台湾などからも批判が挙がっています。

デモの現状

今回のデモでは最大103万人(主催者発表)もの人が参加しており、この人数は香港の人口の1割以上にもなります。
当初、香港政府はデモ隊の抗議に対して強硬姿勢を貫いていましたが、最終的に「政府は改正作業を完全に停止した。来年7月に廃案になる事実を受け入れる」という声明を発表します。

しかし廃案との発表はなく、法改正が再開される可能性があるためデモ隊による抗議活動は終わっていません。

またデモ隊が過激化しており、香港警察が沈静化を図っていますが、そもそも火炎瓶などを用いた過激な暴力行為、破壊行為は香港警察による「なりすまし」の疑惑もあります。

デモが暴徒化すれば鎮圧という名目で、放水車の導入も可能になります。

鎮圧の際にはゴム弾や催涙ガスが使用されていますが、威嚇射撃ではあるものの実弾の発泡もありました。

中には香港警察が無関係な市民を逮捕したり過剰な暴力をふるっている動画もTwitterに出回っていますね。

まとめ

当初、逃亡犯条例の改正案の撤回を求めて起きたデモ活動ですが、現在抗議側が要求している内容は「5大要求」です。

  • 改正案の完全撤廃
  • 警察と政府による市民活動を「暴動」とする見解の撤廃
  • デモ参加者の逮捕・起訴の中止
  • 警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査実施
  • 民主的選挙の実施

8月31日にも反中国・反香港政府デモが行われており、今回の抗議運動は「雨傘運動」を超えています。

8月28日には中国軍装甲車が香港に進入しています。

香港駐留部隊の交代を実施しただけとしていますが、あきらかな威嚇に感じます。
香港市民も香港政府、中国政府も引くに引けないでしょう。
今後香港がどうなるのか。

スポンサーリンク

【追記】改正案撤回

9月4日、香港政府トップの林鄭月娥行政長官が「逃亡犯条例」の改正案を正式に撤回表明しました。
素晴らしい!!!

デモをした甲斐がありましたね。

「5大要求」のうちの「改正案の完全撤廃」が達成されました。
(厳密に言うと撤廃ではなく撤回なので、今後改正の可能性はあります)

ネット上ではありますが、香港の人たちが頑張ってデモ活動やっていたのを知っているので、こんなに嬉しいことはありません。
感動しました。